STP分析を分かりやすく解説!

「STP分析」という分析方法をご存じでしょうか。

商品や企業の方針を決める際に活用してほしいフレームワークであり、やりやすく、分かりやすいため特にマーケティング初心者の方は押さえてほしいワークです。

今回のコラムではSTP分析の目的や方法、事例などを紹介し皆さんの事業に生かしていただきたいと思います。

STP分析とは

STP分析(エス・ティー・ピー分析)はマーケティング立案の際に使用されるフレームワークであり、マーケティングの父であるF・P・コトラーが提唱した分析方法です。

STPは「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」の頭文字をとったもので、この3つの要素はマーケティングにおいて必要不可欠な要素です。特に新たな事業やビジネスを行う上で、自社の商品やサービスが市場においてどの立ち位置に置くかは極めて重要なため、STP分析を用いて市場の分析を行い、ユーザー目線で分析、事業を展開していきましょう。

各要素の分析

STPの3つの要素を詳しく分析し、さらにSTP分析の意味を理解していきましょう。

  • S:セグメンテーション(Segmentation)

市場を細分化し、顧客を分布させることです。

顧客を年齢や性別、職業など様々な属性によって分け、どこに属する顧客へ向けて商品を作るのかを考えます。分けた区分のことを「セグメント」、分ける工程のことを「セグメンテーション」と呼びます。

実際に分ける要素の例として以下のものが挙げられます。

  • 人口統計的変数(年齢、性別、職業、家族構成など)
  • 地理的変数(居住地、宗教、慣習、気候など)
  • 心理的変数(ライフスタイル、価値観、性格、趣味など)
  • 行動変数(買い物の頻度や場所、利用方法、購買状況など)
  • T:ターゲティング(Targeting)

セグメンテーションで分けた層の中から、狙うべき層を定めることです。

「分ける」セグメンテーションに対して「絞る」ターゲティングは誰をターゲットにして商品を提供するかです。ターゲティングには3つの方法が存在します。

  • 無差別型マーケティング

セグメントした顧客の区分に関係なく、ひとつの商品をすべての市場に供給する戦略です。どの顧客も同じものを求めている場合に有効で、効率よくマーケティングできるのが特徴です。主に食料品や日用品で活用されます。

  • 差別型マーケティング

セグメントした市場の中のいくつかの市場に焦点を当て、供給する戦略です。ひとつの商品を「大人向け」や「子ども向け」といった複数の展開を行い、それに伴い料金設定や機能を変えて提供するのが特徴です。

  • 集中型マーケティング

ある特定の市場に向けて商品やサービスを提供する戦略です。高級ブランドや、専門性の高い商品など1部のファンに向けて展開するのが特徴です。

  • P:ポジショニング(Positioning)

ポジショニングとは、自社の商品やサービスを市場のどの位置に設定するかです。競合他社と自社を比べ、他社との差別化をどう図るのか、他社に負けない自社の強みはどこなのかを分析し、設定します。

ポジショニングを策定するには、「ターゲット」「カテゴリー」「差別ポイント」の3つの要素が必要です。

「ターゲット」:誰に購入してほしいか、どんな人に利用してもらいたいか

「カテゴリー」:店舗販売やネット販売などどのような枠組みで競争するのか

「差別ポイント」:他社にはない自社の強み、独自性

この3つの要素を踏まえ消費者が市場をどのように認識しているかを分析しましょう。どのポジションに競合がいないか、競合の規模はどれくらいかが一目でわかりやすいため、ポジショニングマップを作成してポジショニングを行う方法もあります。

STP分析を行う目的・メリット

  • 周囲の環境を把握できる
  • 自社のプロモーション戦略を明確にできる
  • 競合を避けられる

STP分析は主に自社と競合他社の差別化を見極める目的で実施されます。分析し、市場の環境を可視化することで自社がどこへ、どのように市場へアプローチをかけるのか検討しやすくなります。

また、STP分析を行うことで従業員などに分かりやすく戦略を浸透させることができます。周囲の環境、競合、ターゲットとする顧客などを従業員も確実に把握することで事業に一体感が現れ、同じ方向を向いて進めることが可能になります。

STP分析のやり方

では、実際に分析を行う上で分析の流れとポイント、注意点を解説していきます。

分析の手順

1.目的を明確にする

STP分析に関わらず、事業において分析を行う際には必ずなぜ分析をするのか、何のために行うのかの目的を明確にしましょう。目的がなければ、どの方向に向かって分析をすればよいのか、そもそも何のために分析をしているのか分からなくなってしまい、分析しても事業に生かすことができない場合があります。

具体的な目的を明確にしたら、その目的に沿って分析を進めるよう心がけましょう。

2.セグメンテーションを行う

自社が提供する商品、サービスに関係のある要素で顧客をセグメントしていきます。

前述した「人口統計的変数」「地理的変数」「心理的変数」「行動変数」の指標を使い細分化していきましょう。また、「4Rの原則」と呼ばれる視点も活用できます。

Rank(優先順位):優先度の高いセグメントか、優先順位はそれぞれ何位か

Realistic(有効性):対象セグメントに十分な売上につながるターゲットや市場があるか

Reach(到達可能性):商品やサービスを実際に届けられるか

Response(測定可能性):顧客に与える影響を計測できるか

どれか1つの要素でセグメンテーションをするのではなく、自社に適した軸や視点を組み合わせながら、セグメンテーションを行いましょう。

3.ターゲティングを行う

セグメントした市場の中から、自社に適したターゲットを絞りましょう。ターゲティングのポイントは、ニーズがあり、市場がある程度成長していて、かつ競合他社が少ない市場を選定することです。「無差別型マーケティング」「差別型マーケティング」「集中型マーケティング」の3つの視点を持ち、自社の商品、サービスはどのセグメントに適しているのかを見極めましょう。

4.ポジショニングを行う

決定した市場の中で、自社が狙えるポジションを見定めましょう。市場の規模、競合の有無や立ち位置など周囲の環境をよく分析し、自社はどの立ち位置を目指すのかを決定します。

セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングはどの順番で行っても問題はありません。自分が分かりやすい、着手しやすい項目から始めるのをお勧めします。しかし、どこから手を付けていいのか分からない場合はセグメンテーションから行うことで全体を把握することができ、その後の項目もやりやすくなるため、迷ったらセグメンテーションから順に行いましょう。

5.マーケティング戦略を決める

STP分析を行い、自社が狙う市場、アプローチするセグメントを決めたところでマーケティング戦略を検討します。定めたターゲットに対して有効な宣伝方法や販売方法など、最初に設定した目的に沿ってどのようなマーケティング戦略を取るかを決定しましょう。

分析にあたっての注意点

STP分析をより有効に行うための注意点を3点ご紹介します。

多角的な視点を持つ

分析を行う上で、ついこの市場にアプローチをしたいという願望が入ってしまったり、企業目線ばかりで考えてしまい顧客のことを考えていなかったりします。STP分析はあくまでも市場を客観的に分析し、ターゲットを絞り、自社の立ち位置を確認するものです。1つの視点だけで分析を進めるのではなく、顧客視点や客観的視点を持ち、自社のあるべき姿を現せるようにしましょう。

必ず実現可能な結果になるとは限らない

分析を進めていくうえで、必ずしも自社が実現できる結果になるとは限らないということを把握しておきましょう。先に存在する競合の規模やコストの面などで実現不可能な結果になることもあります。STP分析だけではなく、他の分析方法などを使って現実的に実現できる事業を検討していきましょう。

分析手順にこだわりすぎない

前述したように、必ず セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニング の順で行う必要はありません。どの項目も連動しているため、どれから始めても分析結果に変化はありません。分析しやすい要素から始めたり、各要素を行き来したりして自分なりにやりやすい方法で行いましょう。

実例による解説

スターバックス

世界最大のコーヒーチェーン店“スターバックス”を分析

セグメンテーション:利用顧客の年齢、職業、社会的地位、都市の大きさ

ターゲティング:エリアごとのニーズを調査してターゲティングをしています。特に都市部では「平均以上の年収を持つある程度の社会的地位を持ったオフィスワーカー」がターゲットだと考えられ、その結果高級感の溢れる店内演出に成功したと思われます。また、朝の早い時間、ランチ時間、夕方などの時間に分けてターゲットを変えているのも戦略の1つだと考えられます。

ポジショニング:「おしゃれで高級感のある美味しいコーヒーチェーン店」という新たなポジショニングに成功しています。家や職場でもない3つ目の自分の居場所という意味の「サードプレイス」をコンセプトに掲げ、今までになかった独自のコーヒーチェーン店の地位を確立してきました。

ゴンチャ

台湾を拠点とし、第3次タピオカブームの火付け役であるお茶専門店“ゴンチャ”を分析してみましょう。

セグメンテーション:年齢、性別

ターゲティング:10代~20代のZ世代と呼ばれる女性をターゲットにしています。SNSを駆使して情報収集をする層をターゲットにし、商品の見た目を写真映えするよう工夫されています。

ポジショニング:「*コーヒー嫌いのスタバ好き」へお茶専門店の印象を与えるため、あえてコーヒーなどのお茶以外の商品は取り扱っていない。「お茶のスタバ」というお茶専門店にはないポジションを確立しています。

*ゴンチャ ジャパン社長が明言 タピオカドリンク「ゴンチャ」が大人気のワケ | 外食 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)

ニトリ

家具やインテリアなどの生活用品を提供している業界大手のニトリについて見てみましょう。

セグメンテーション:無差別型マーケティングを取っており、市場を明確にセグメンテーションしていない

ターゲティング:明確なターゲットはいませんが、都市に展開する店は中価格帯をメインに若い年齢層やファミリーをターゲットにしていると考えられます。

セグメンテーション:「お、ねだん以上」というキャッチコピーから、比較的手頃な価格でありながら高品質、高機能な商品を提供し他社との差別化に成功しています。

まとめ

①「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」はマーケティングにおいて欠かせない要素

②分析をすることで市場を客観的に見ることができ、自社の立ち位置やあるべき姿を把握することができる

③ある一方から見るのではなく、多角的視点を持ち、顧客目線で見ることを忘れずに行う

STP分析に関わらず、事業についての分析は定期的に行うことをお勧めします。

日々目まぐるしく変わる市場の荒波に流されてしまわないよう、一度分析したものでも何度も分析を行うことを心がけましょう。

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