ファンマーケティングを活用しよう!

一般のマーケティングは、不特定多数の顧客に対して商品やサービスを販売するものです。しかし、「ファンマーケティング」と呼ばれる特定の顧客に対して販売するマーケティング法があります。

今回のコラムでは「ファンマーケティング」をテーマにメリットやポイントなどを解説していきます。

ファンマーケティングとは?

ファンマーケティングとは、自社の商品やサービスに対して一部の熱狂的な顧客である「ファン」に対して販売するマーケティング方法です。

従来のマーケティング法は、TVCMや広告などを使って不特定多数の顧客に対してアプローチをかけていましたが、近年インターネットの普及により、口コミやSNSによる拡散などで顧客を獲得することが可能になり、中期的にファンを獲得するファンマーケティングが注目されています。

「ファン」とは、商品・サービス・企業に愛着心をもっている顧客である「ロイヤルカスタマー」よりも上位に位置する顧客のため、そのファンにアプローチをかけるのは非効率的であるように見えます。しかし、「1:5の法則」という法則によると、新規顧客の獲得は既存顧客の5倍のコストがかかると言われており、新規顧客を獲得するよりも既存顧客をファン化させ、継続利用率を向上させる方がコストや時間がかからず、効率的であることから、ファンマーケティングが重要視されています。

ファンマーケティングのメリット

ファンマーケティングを行うメリットとして、3つ挙げられます。

  • 競争優位性を獲得できる

成熟段階の市場では、品質や機能が安定してしまい差別化が難しく、顧客は商品やサービスの価格で購入を決定します。その結果、競合との差別化を図るために価格を下げる価格競争が起き、利益が減少してしまいます。

ファンは、その企業や商品、サービスそのものを支持しているため、ある程度価格が高くても購入してもらえたり、他社との差別化を図ろうとして必要のない機能を付けたりする必要がありません。熱狂的な顧客を増やすことで成熟市場でも高い利益率を維持することができ、持続的な競争優位性を持つことができます。

Appleファンの人は新作iPhoneが高額であっても購入する傾向にあるよね。

  • 新規顧客の獲得につながる

企業が商品やサービスを宣伝する際、TVCMや雑誌の広告などを使用します。しかし、その方法では必ずしも新規顧客が増えるとは限らない上に広告宣伝費がかかってしまいます。

熱狂的な顧客であるファンは、自分が「好き」なものを支持しているためその「好き」を口コミやSNSで自ら発信する傾向があります。近年はSNSの普及により新たに商品を購入する際にSNSで情報収集を行うことも多いため、ファンがSNSを通じて商品、サービスの情報や良さを発信し、書き込みを見た顧客が新たに購入してくれることがあります。その新規顧客の中から新たなファンが生まれる可能性もあります。このように、連鎖的に顧客が増え利益が上がると同時に宣伝費がかからず、低予算で新規顧客を獲得できるメリットがあります。

公式サイトより、ファンによる口コミの方がよりリアルな声が聞けて信頼があるとみなされることも多いよ。

  • 良質な「お客様の声」が聞ける

ファンは、その商品やサービスをこよなく愛するため、何度も利用したり通ったりします。そのため、企業側が気づかなかった改善点に気づくことがあります。ファンマーケティングは、ファンのリアルな声を聞き、反映させることで「自分の意見を聞いてくれた」という認知欲求と、改善による購買意欲を持続させることができます。ファンだからこそ分かる良さや改善点を積極的に取り入れより良い商品、サービスを提供できるようになる良さがあります。

いい所も悪い所も、ファンだからこそ分かることもあるよね。

ファンマーケティングを成功させるポイント

顧客を「ファン化」させるには、顧客の共感愛着信頼を押さえることが重要です。

まずは、顧客に共感してもらうことです。共感してもらうには自社の商品、サービスが他社とは違う独自の価値があることを顧客に伝える必要があります。顧客の声を聞き、独自価値を見出し発信、共感してもらうことがファン化につながる一歩です。

そして、愛着を持ってもらうことが重要です。愛着を持ってもらうには開発された商品のストーリーや、開発秘話などを伝えることが有効とされています。また、商品やサービスに気軽に体験できるできる機会を提供し、その時間を共有することで商品やブランドに対しての愛着を持ってもらうことができます。

最後に、信頼を得なくてはなりません。どんなものでも不透明な部分があれば、「本当に信頼してよいのだろうか」と不安になることがあります。そのため、製作過程や製造工程、製作者、輸入品があればどこの国からなのかなど、商品の背景を明確に開示することで信頼が得られるようになります。また、顧客に対して誠実であることも重要です。どんな顧客にも誠実に対応することでその態度からファンになることもあります。経営陣だけでなく、直接顧客と関わる場合は自身の接客態度でもファンを作ることができることを覚えておきましょう。

実行するうえで効果的な方法

ファンマーケティングをどのように実行するべきなのか、いくつかの施策をご紹介します。

ファンとの接点を作る

ファンマーケティングでは、ファンとの接点が大切です。従来の広告では、不特定多数の顧客に向けて宣伝するため、ファンとの接点を得ることはできません。そこで、SNSを活用してファンとの接点を作りましょう。

TwitterやInstagramなど、公式SNSを作成することで自然にファンがフォローし、特定の相手に向けて情報を発信することができます。そこで情報発信をするだけでなく、ライブ配信を活用することでもっとファンとの距離が縮まり、直接的なやり取りをすることができます。ファンが持っている疑問をライブ配信を通して解消したり、ファンの反応に合わせて商品を紹介したりすることでより信頼関係を築くことができます。

株式会社パル

3COINSやLattice、GALLARDAGALANTE OUTLETなど多くのブランドを持つ婦人、紳士服・雑貨等の企画製造・卸・小売り店です。当社はターゲットが比較的若い年齢層であるため、Instagramを活用し、ファンとのコミュニケーションを図っています。各店舗でインスタライブを行うことでファンは最寄りの店舗の在庫状況や仕入れ状況を知ることができます。また、チャットを通してリアルタイムで販売員とやり取りをするなど、ファンと直接接点を作ることに成功しています。

インスタライブアーカイブ|パル公式通販サイト|PAL CLOSET

フォローを大切にする

ファンマーケティングは、ファンを獲得することももちろん重要ですが、獲得したファンと長期的に関わることも重要です。そのため、ファンが提供してくれた意見に対して誠意を持って応えたり、トラブルが起きた際にも誠実に対応したりすることが重要です。

また、商品を購入した後やサービスを提供した後のアフターフォローも重要です。全員に向けたメッセージではなく、その顧客のニーズに合った商品をお勧めしたり、ただ企業が情報発信するだけではなく顧客が求めているものを汲み取り発信したりすることがファンと長期的に関係を持つことができる秘訣です。

株式会社ボーネルンド

世界中の知育玩具を販売する小売り店です。当社は顧客に対して「あそびのもり」という通信誌を送っています。「あそびのもり」は道具の紹介や子どもについて、子どもを取り巻く環境についての記載がされています。トラブルが起きた際の対応だけでなく、当社の商品を購入することで新しい情報を手に入れることができるという顧客のメリットと、単純接触効果により自然と愛着が湧く施策です。

あそびのもり トップ|あそびのもりオンライン (bornelund.co.jp)

クラウドファンディングを活用する

クラウドファンディングとは、資金を調達したい人が自身のプロジェクトを提示し、賛同者から資金の支援をお願いする資金調達法です。

クラウドファンディングは商品やサービスそのものを評価されるだけでなく、プロジェクトの背景やストーリーに共感して支援する人も多いです。そのため、ストーリーに共感した支援者がSNSで書き込みをしてくれ、拡散されることで新たな共感者が支援してくれることがあります。また、支援をしてくれた人が熱狂的なファンになることもあります。クラウドファンディングを行うことで、資金とファンの両方を獲得することができる可能性があるため、活用することをお勧めします。

株式会社MAPPA

アニメーション制作会社の株式会社MAPPAとプロデュース会社の株式会社ジェンコ、映画監督の片渕監督で、「この世界の片隅に」の劇場版アニメ化を目的にクラウドファンディングを行い、成功した事例があります。当プロジェクトの成功理由として、監督やスタッフの制作に対する想いに共感した人が多かったことが挙げられます。また、作成の経過を載せることで信頼を得ることができ、支援者を多く募ることができたと考えられます。

片渕須直監督による『この世界の片隅に』(原作:こうの史代)のアニメ映画化を応援|マクアケ - アタラシイものや体験の応援購入サービス (makuake.com)

まとめ

①ファンマーケティングとは、特定の顧客に向けたマーケティング施策

②ファンマーケティングを行うことで自社製品がより広く拡散され、新規顧客獲得にも繋がる

③自社に共感し、愛着を持ち、信頼を得ることがファン獲得に重要視される

④ファンを獲得するだけではなく長期的に関係を持てるようアフターサービスも欠かさず行う

ファンは、価格や機能ではなく、商品やサービス、企業への信頼や愛着、人の良さなどからファンになることが多いです。

マーケティング方法とはいえ、人と人のつながりがビジネスにつながっていくため、どんな場面でも誠意を持って行動すること、顧客のことを考えることがファン獲得に繋がるのではないでしょうか。

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