バリュープロポジションを知ろう!
皆さん、”バリュープロポジション”という言葉をご存じでしょうか?
これは顧客に競合他社の商品ではなく、自社の商品を選んでもらう際に重要な概念です。
今回のコラムではバリュープロポジションの概要や重要性、作成方法などをご紹介します。
バリュープロポジションとは
ValuePropositionとは、直訳すると「価値命題」という意味です。顧客が他社商品ではなく、自社商品を購入する理由や、顧客が自社商品でしか得られない価値、企業が顧客へどのような価値を提供するのかなどを指します。
例えば、旅館を選ぶ際に「駅から近いA旅館」と「おもてなしが良いB旅館」があるとします。この場合、A旅館は「駅から近い」という価値を顧客に提供し、B旅館は「おもてなし」という価値を提供しています。このように、自社がどのような価値を顧客に提供するかをバリュープロポジションと言います。
また、バリュープロポジションは他社との差別化という要素も含まれています。他社商品と自社商品では何が違うのか。自社商品を選ぶ理由作りとしてもバリュープロポジションは活用されます。
バリュープロポジションの重要性
バリュープロポジションは顧客ニーズと企業の提供価値のミスマッチを避けるために重要です。
企業が競合他社との差別化を図ろうとして、商品の「ニッチ化」が進む傾向にあります。満を持して奇抜な商品を販売し、その結果顧客のニーズを満たせず販売不振や顧客離れという事態を招く恐れがあります。
そうならないために、「バリュープロポジション」の概念が重要です。競合以上にユーザーニーズに合った商品、サービスを提供し自社独自の価値を創造する必要があります。
また、自社の強みが明確になるという点でもバリュープロポジションは重要です。
競合が提供していない、自社独自の価値を見出すことで自社の強みが明確になります。そうすることでどこをPRするべきかが明らかになり、宣伝方法や広告など、的確なプロモーションをすることができます。
余計な施策や無駄な競争をすることなく自社の価値を確立できるため、バリュープロポジションはの考え方は必要です。
成功事例
事例1:ダイソン
“吸引力が変わらないただ1つの掃除機”として自社商品の価値を確立しているダイソンはバリュープロポジションに成功したと言えます。
従来の掃除機はパック式で、紙パックが満タンになると吸引力が落ちてしまうという課題がありました。また、紙パックを交換すれば吸引力は戻るものの、メーカーや種類によって使用するパックが異なるため簡単に購入できないという不便さもありました。
ダイソンはサイクロン式掃除機を販売し、瞬く間に人気商品になりました。サイクロン式掃除機は吸引力を落とさずに掃除機の連続使用が可能になり、紙パックの使用を廃止したことでパックを交換する手間や費用が省けました。
また、“吸引力が変わらないただ1つの掃除機”という一言で「吸引力が変わらない」=顧客ニーズを満たしている。「ただ一つの掃除機」=他社には存在しない自社独自の価値である。ということがアピールでき、顧客が掃除機を購入する際に「ダイソンの掃除機にしようかな」と思ってもらうことができます。
事例2:Uber
配車サービスであるUberは、「ユーザーの利便性」というバリュープロポジションを提供しています。
従来のタクシー業界では顧客がタクシー会社に電話をして配車をお願いし、直接ドライバーに目的地を伝えその移動距離により料金が発生する仕組みでした。しかし、これでは電話やドライバーと会話をする手間、「現金が足りなくなるかもしれない」という不安を抱え顧客の精神的負担になっていました。
そこでUberはスマートフォンのアプリでタクシーを呼び、目的地や決済までスマートフォンで完結させることに成功しました。
その結果顧客の精神的負担の軽減はもちろん、ドライバーも目的地が分かっているため余計な会話をする必要もなくなりました。また、走行ルートは最短距離で支払いをしているため、「ドライバーが遠回りをして余計な金額を支払わされた」というトラブルの防止にもつながります。
事例3:Slack
ビジネスコミュニケーションツールであるSlackは信頼性と生産性の両方をバリュープロポジションとして保持しています。
Slackはコミュニティを自由に作れ、個人でもグループでも簡単にコミュニケーションを取ることができます。また、ツール上での通話やファイル共有、ToDo管理やアラート機能、リマインダー、オンラインミーティング機能など、ビジネスに必要な機能が幅広く使用できます。
職場で必要なコミュニケーションが1つのツールで完結するように設計されているため、様々なツールを使う手間が省け、それぞれの使い方を覚える必要が無くなりユーザーからの支持を得ています。
また、高セキュリティで情報の漏れを防ぐ点も顧客のニーズに合ったバリュープロポジションを確立しています。
バリュープロポジションキャンバスを作成しよう
バリュープロポジションを作成するには、”バリュープロポジションキャンバス(VPC)”と呼ばれるフレームワークを使用することで簡単に作成をすることができます。
バリュープロポジションキャンバスは、「誰に何をするのか」「顧客のニーズ」「顧客に対して提供できる価値」の三段階に分けて順番に記入します。
誰に何をするのか
最初に「顧客への提供価値」と「顧客セグメント」を記入します。
①「顧客への提供価値」:自社が提供する製品、サービス
②「顧客セグメント」:自社の製品、サービスのターゲット
特にBtoB企業は、「顧客セグメント」についてよく考えるようにしましょう。誰に向けた製品であるのか、それは組織全体ではなく経営陣なのか、営業部長なのかなど、組織の中でも具体的なターゲットを絞ることで、後の悩みや課題などが的確に埋まります。
顧客のニーズ
次に、右側の顧客セグメントの欄を埋めます。
③「顧客が解決したい課題」:顧客が何を解決したいのか、客観的に見て考えます。
④「顧客の利得」:課題が解決することにより、顧客が得られる結果や恩恵を記入します。
⑤「顧客の悩み」:課題解決をするにあたって顧客が持つ悩みについて記入します。
顧客に対して提供できる価値
最後に、左側の顧客への提供価値について記入します。
⑥「製品やサービス」:自社が提供している製品やサービスのすべての要素を記入します。
⑦「顧客の利得を生み出すもの」:④の顧客の利得を生み出すための具体的な方法を記入します。
⑧「顧客の悩みを取り除くもの」:⑤の顧客の悩みに対し、具体的な解決方法を記入します。
記入例
では、実際どのような内容を記入するべきなのかを女性専用フィットネスクラブのカーブスを事例にとって見てみましょう。
カーブスは、単に「安い」「手軽」という価値を提供しているのではなく、”異性の目が気になる””自分の体形を見たくない”といった顧客の悩みに寄り添った価値を提供し、独自のバリュープロポジションを確立しています。
顧客が本当に求めているものをいかに的確に提供できるかが競合と差をつける重要な鍵になってきます。
作成ポイント
バリュープロポジションキャンバスを作成するにあたり、重要なポイントは、客観的な視点を持つことと、優先順位を決めることです。
バリュープロポジションキャンバスに限らず、企業におけるフレームワークは客観的視点を持たなければ意味がありません。顧客の本音を見極める力、自分が顧客だったらどんなことを求めるかなど、「できるか」「できないか」ではなく、まずは夢物語でも書き出してみましょう。
その後に、書き出した中の優先順位を決めましょう。顧客が求めるすべての要素を入れ込むことは難しいです。顧客ニーズの中でもどれを優先するべきなのかの取捨選択する必要があります。自社ができること、できないこと、工夫すればできることなど、顧客ニーズの優先順位に沿って考え、実現化していきましょう。
まとめ
今回のコラムでは、「バリュープロポジション」についてご紹介しました。
競合との差別化を図るために、顧客ニーズを無視していては差別化はできても商品は売れません。
ドリルを購入する顧客はドリルを求めているのではなく、ドリルで開ける穴を求めているように、顧客が求めているものは案外根本的なところに落ちています。
ぜひ、自社独自のバリュープロポジションを確立し、競合他社が「悔しい!」と思ってしまう商品、サービスを世に送り出しましょう。
顧客の隠れたニーズを見つけるためには、「なぜ」を追求してみましょう。
今日購入した商品の思い出して、「なぜ買ったのか」「なぜこの商品だったのか」を考えると、見えてくるものがあるかもしれませんね。