デザイン経営って知ってる?~特許庁も推進するデザイン経営とは一体~

世界的大手企業であるApple社がなぜここまで愛されているのか、皆さん分かりますか。

iPhoneという革新的なデバイスを発明したから?スタイリッシュな見た目をしているから?

Apple社が愛される理由の根底には、経営に”デザイン”を取り入れているからです。

今回のコラムでは、Apple社も取り入れている”デザイン経営”についてご紹介します。

今世界的に注目されているデザイン経営を取り入れ、更なる飛躍を目指しましょう!

デザイン経営とは

”デザイン経営”とは一体何のことでしょうか。

"デザイン経営"だから、商品の見た目をかっこよくしたり、ロゴをおしゃれにしたりすることがデザイン経営か!

と、間違えられがちですが、残念ながらそうではありません。

「商品の見た目」もデザイン経営の手法のひとつではありますが本質ではないので注意をしてください。

「デザイン経営」とは、デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法です。

特許庁はデザイン経営を推進しています | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

なんだか抽象的で分かりづらいですよね。

デザイン経営とは「デザインを経営の根底に取り入れること」です。

”デザイン”の定義を確認しよう

まず、”デザイン”という言葉の定義について改めて考えてみましょう。

皆さんが”デザイン”という言葉を聞いて何を思い浮かべますか?

服のデザインなら、色とか模様とかの見た目のことを”デザイン”って呼んでる!

もちろんこれも”デザイン”に含まれます。しかし、その他でも”デザイン”という言葉は使いますよね。

デザインとは、ある問題を解決するために思考・概念の組み立てを行い、それを様々な媒体に応じて表現することと解される。

デザイン - Wikipedia

つまり、”デザイン”とは「見た目」を含み、「問題解決」「設計」の3つの要素で成り立っています。

”ユニバーサルデザイン”なんか問題解決のために設計し、表現しているよね!

そうです。”ユニバーサルデザイン”は、商品の見た目の話でなく、すべての人が使いやすい製品、環境を整えることです。

”デザイン”という言葉の意味を改めて認識しましょう。

”デザイン経営”を考えよう

では本題の”デザイン経営”に戻りましょう。

デザイナーの「手法」や「思考の方法」をブランドの構築やイノベーション(技術革新)の創出に活用し、企業競争力の向上を目指すのが、デザイン経営の本質です。

出典:特許庁はデザイン経営を推進しています | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

つまり、自社製品、自社ブランドを多くの人に好きになってもらうこと、革新的な商品を作ることデザイン経営です。

抽象的な分野で分かりにくいかもしれないので、事例と併せて理解を深めましょう!

Apple社のデザイン経営

Apple社が使う”デザイン”とは、単に製品の見た目の話だけではありません。

例えば、Apple Watchでは手首のフィット感や着脱のしやすさなども考えられていますし、Apple Storeでは立地も考えられています。iPhoneでは持ち心地や触り心地、意図した操作が正しく反応するようにと考えられています。

このように、Apple社は経営の根底にデザインを取り入れ、革新的な商品を作り続けてきました。その結果、Apple製品を好んで利用する顧客が増え、ブランドが構築されていったと考えられています。

ダイソンのデザイン経営

サイクロン式の掃除機を発明し、世間を騒がせたダイソンも経営の根底にもデザインがあります。

従来の掃除機の前提を覆し、連続して使用しても吸引力が落ちないようにと問題解決のために設計し発売しました。羽のないドライヤーや扇風機もダイソンのデザイン経営を代表する製品です。

ダイソンには、デザイナーがいません。しかし、ダイソンの商品は見た目で「ダイソン商品だ」と分かるような形状になっています。それは形状に決まりはなくてもなんとなく企業文化に埋め込まれ、表現されているからでしょう。

これにより、唯一無二のブランドを確立することに成功しています。

デザイン経営の効果

デザイン経営を取り入れるメリットって何かそれデータでもあるんですか?

特許庁が発表しているデザインへの投資効果について、こんなデータがあります。

出典:経済産業省・特許庁『「デザイン経営」宣言  01houkokusho.pdf (jpo.go.jp)
  • デザインに投資すると、その4倍の利益を得られる
  • デザインを重視する企業の株価はS&P 500全体と比較して10年間で2.1倍成長した
  • デザイン賞に登場することの多い企業の株価は市場平均と比較し10年間で約2倍成長した

このように、デザインに投資をすることは企業にとって大きな利益になることが分かります。

デザイン経営を取り入れよう!

さて、ここまでデザイン経営とはどんなものかをご紹介してきました。

では実際にデザイン経営を取り入れるフローをご紹介したいのですが、デザイン経営の入り口に決まりはありません。自社の課題を掘り下げたり、未来像を掲げてみたり…と多種多様なのです。

そこで、特許庁による「中小企業のためのデザイン経営ハンドブック」を元にデザイン経営の入り口をご紹介します。

自社に合ったやり方を組み合わせて、是非デザイン経営を取り入れてみてください!

1.キャラクターの確立から始める

人間に個性があるように、会社にも個性があります。あなたの会社にはどんな個性がありますか?

自社が歩んできた歴史や創業者の思いを言語化して、個性を客観的に見つめ直してみましょう。

  • 意思と情熱を持つ

”デザイン経営”というと有名なデザイナーへ依頼したり、コラボレーションをしたりすることが多いですが、デザイナー頼みのデザイン経営は長続きしないと言われています。大切なのは、発注者側の主体的な「意思と情熱」です。自社がどのような思いで存続してきたか、社会における役割は何かをしっかり持ち、デザイナーに伝えることが重要です。自分軸をブレずに持ち、時にはデザイナーと意見をぶつけながら良いデザインを求めましょう。

  • 歴史や強みを棚卸しする

これまで自社が提供してきた価値を再確認し、自社の存在意義を再認識しましょう。これは未来に向けた新たな価値創造をのための軸探しです。

会社がどんな思いで設立され、何を軸に経営をしてきたか、社会に何を提供しているかを改めて確認し、社員全体に共有をします。社員の共通認識として共有することで価値を実現させようと会社の動きに軸ができ、「文化」が形成されていきます。

しかし、会社の内部だけでは気づかない視点がある可能性があるため、デザイナーなどの外部の人を巻き込んで会社の軸を見つけましょう。

  • 未来を妄想する

競争優位に立つためには、自社を支持してくれるファンの存在が大切です。では、ファンを増やし、維持するためには何が必要でしょうか。

必要なものはビジョンです。どんな会社にしたいか、どんな経営をしていくか、未来を妄想して目標を掲げることです。そのビジョンに賛同、共感してくれた人がファンになっていきます。

そして、ビジョンを描く際に必要なのは「WHY」です。なぜこの夢を描いたのか、なぜそう思うのかの「なぜ」の部分に人は共感します。改めて、自社のビジョンについて向き合い、共有しましょう。

2.カルチャーの醸成から始める

「文化」というのは空気のような存在です。確かにそこにあるのに、日々意識して生活はしていませんよね。企業文化は、自分たちらしい意思決定を促し、社内外のステークホルダー(利害関係者)を動かすカギになります。そんな企業文化をデザインし、根付かせてみましょう。

  • 社員の行動変容を促す

会社の存在意義や夢を掲げることも重要です。しかし、さらにその夢を社員に浸透することで更なる発展が目指せます。

浸透させるには、経営からクレド(信条)を意識して行動し見て学んでもらう方法や、定期的に定めたクレドに関するエピソードを発表してもらう場を設ける方法などがあります。

こうすることでクレドが浸透し、新しい企業文化が作り上げられます。このように企業文化をデザインするのもデザイン経営のひとつです。

  • 社内外の仲間を巻き込む

物事は個人で考えるより、団体で考えた方が良いアイデアが浮かびますよね。何事もチームでやると大きな目標を達成できると考えられています。多種多様な知識や経験、ネットワークを掛け合わせることが重要です。

コラボレーションを行う場合は、「発信と共有」が大切です。

メンバーの仕事内容や得手、不得手、目指す未来などをチーム内で発信、共有することで心理的安全性が高まり、助け合いの文化が醸成されます。

発信、共有をし誠実に取り組む姿勢がコラボレーションを成功させる鍵になります。

  • 魅力のある物語を発信する

多くの製品に溢れ返っている現代では、製品の価値や質だけでなく、「ストーリー」も重視されるようになりました。事業を通して社会にどう貢献し、どのような未来を目指すのか、ストーリーとして語ることで顧客との強い絆を築く鍵になります。

日本の企業は長寿企業が多いです。先代の意思や歴史、思いを紐解き、今後の目指す場所を発信することで顧客をファンに変えていく可能性があります。

3.モノ・サービスの創出から始める

社会と会社を繋ぐ接点は、会社が作っているモノやサービスです。このモノやサービスが受け取り手にどのように評価されているのかを皆さんはご存じでしょうか。

人の心をつかむには、ユーザーをよく観察し、そこで得た知見を取り込み、作っては試すを繰り返すことです。

モノやサービスをデザインし、人々の心を掴む企業になりましょう。

  • 人を観察・洞察する

「顧客の声に耳を傾けよ」と以前から言われている言葉ですが、デザイン経営における「顧客」とは未来の顧客のことを指す場合が多いです。自社のモノやサービスを知らない人を惹きつけ、ファンになってもらうにはどうするかを考えます。

人のふとした言動に目を向け、共感し、その裏側にある心理を読み解き商品開発やサービス開発に取り込むことで人々の心を掴むモノを生み出すことが出来ます。

「観察」と「洞察」により人の心を掴むモノを創出させましょう。

  • 実験と失敗を繰り返す

「プロトタイピング」という工業製品の開発手法の一つで、設計の早い段階から実際に稼働する製品モデル(プロトタイプ)を作成し、その検証とモデルの再制作を何度も反復する手法があります。その手法をデザイン経営でも取り入れてみましょう。

顧客にアイデアを体験してもらい、その価値を検証してもらい、フィードバックを取り入れアイデアを形にしていく。このように「実験」と「失敗」を繰り返しながらモノを作っていきます。

プロトタイプは完成形の見本ではなく、顧客と会話をし、フィードバックをもらうための「道具」にすぎません。

たくさん実験し、失敗を繰り返すことで顧客に寄り添ったモノを作りことが出来ます。

  • 心をつかむモノ・サービスをつくる

「デザイン経営」の「デザイン」は製品の見た目のことだけを言っているのではないことは皆さんもうお分かりでしょう。

では、「デザイン」という言葉が相応しくないのかというとそうではありません。

人の心を掴むには「見た目」のデザインも重要です。どれだけ良い性能であっても人が手に取ってくれなければビジネスは成立しません。人の感情に働きかけ、人を動かすものがデザインです。そのために、人の心を掴むモノ・サービスを作り上げましょう。

まとめ

いかがでしたか?

今回は「デザイン経営」についてご紹介しました。

デザインを経営ははっきりした手順がなく、どこから始めても、何から手を付けても問題はありません。自社の経営方針に合った、取り入れやすい方法で少しづつ始めてみましょう。

また、デザイン経営という概念は曖昧な表現が多く、分かりづらい部分もあるかと思います。しかし、今世界的にも注目されているデザイン経営を取り入れ、今よりもさらに愛される企業を目指しましょう!

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