MVVって何? ~企業経営におけるMVVの重要性を解説~

企業が持続的に成長するには、組織の存在価値や目指すべき方向性、組織の価値観などを明確にする必要があります。そこで、”MVV”という概念が重要視されています。今回のコラムでは、経営の根幹ともいわれているMVVとはなにかを解説していきます。

MVVとは

”MVV”とは、「Mission ミッション」「Vision ビジョン」「Value バリュー」の頭文字を取った略称であり、日本語ではそれぞれ「使命」「理念」「行動方針」と訳します。企業経営の中核に置くべき指針として経営学者のP・F・ドラッカーが提唱しました。

  • Mission(ミッション)

組織の社会的な使命、存在意義、目的を表します。ミッションをメンバーである従業員が理解することで、各自が目的に対して自分は何を目標にするべきなのかを考え仕事に取り組むことができます。また、社会的な使命をどう実現するのかという経営理念にもつながります。

  • Vision(ビジョン)

組織が将来なりたい姿、目指す方向性のことです。使命を果たした先の組織がどんな姿でありたいか、理想の姿を明確化することで組織の方向性が定まります。

  • Value(バリュー)

組織の価値観や価値基準、行動指針を指します。ミッションやビジョンを実現するため、従業員がどのような行動をとるべきか、組織の判断基準を表したもので、バリューに乗っ取り従業員は行動をすることができます。

つまり、目標(ミッション)に対して達成した際の自分の姿を想像し、(ビジョン)その姿になるためにどう行動するか(バリュー)を指したものをMVVと呼びます。

企業理念と混同されがちですが、企業理念は企業が大切にする価値観のことであり、基本的に変わることはありません。MVVは、状況に合わせてビジョンやバリューが変化します。しかし、ミッションは企業理念に基づいて設定されるため、非常に深い関係であると言えます。

MVVの重要性

なぜMVVが企業にとって重要なのでしょうか。それは、MVVは企業経営の羅針盤であるからです。

企業は、絶えず変化する市場に柔軟に対応していかなければ長期的に存続させることはできません。しかし、変化し続ける荒波に必死に食らいついた結果、自分の立ち位置が分からなくなってしまいどこを目指してよいのか路頭に迷ってしまっていては企業として存在している意味が無くなってしまいます。MVVはそうならないための道標です。MVVを企業経営の羅針盤とし、目標や行動指針を明確にしておけば市場の動向に合わせて変化し続けていても見失うことはありません。

また、企業として大きな壁にぶつかった際に従業員が同じ方向を向いていれば乗り越えることができたり、MVVを策定することで顧客や求職者など、第三者に自らの存在意義を理解してもらいやすくなったりするため、MVVは企業経営にとってとても重要であると言えます。

設定方法

設定する時期については、ミッション・ビジョンは起業後でも設定可能ですが、初めから設定しておくことで問題が起きても改善しやすかったり、目標を明確にして起業することで企業としての在り方を意識しながら業務に集中できるため、起業する前から設定しておくことをお勧めします。バリューは従業員の行動指針になるため、ある程度の従業員が揃ってから設定しましょう。

設定手順

1.メンバーを決める

2.ステークホルダーの分析

3.ミッションを決める

4.ビジョンを決める

5.バリューを決める

  • メンバーを決める

初めに、MVVを設定するメンバーを決めることから始まります。MVVは企業方針を決める大事な役割を担うため、創業者や経営者、取締役や執行役員などの経営に関わる役割を中心に結成します。また、第三者にも伝わるMVVを策定する必要があるため、営業やマーケティングなど直接顧客と関わりのある従業員もメンバーに選ぶことで偏りのない、分かりやすいMVVの設定を目指します。

  • ステークホルダーの分析

メンバーを決めたら、まずは自社がどのような会社であるのか、ステークホルダーから分析します。ステークホルダーとは、企業と利害関係にある者のことを指し、顧客や株主、従業員などを指します。ステークホルダーを分析することで自社を取り巻く環境を整理することができ、置かれている環境に伴ったミッションを策定することができるため、この分析が重要であると言えます。

  • ミッションを決める

ミッションは「自社の存在意義」であり、「自社が果たすべき使命」です。事業活動を通じて実現したい社会の在り方を想像し、言語化しましょう。いわば、「私たちがこんな社会を作ります。」という宣言を、分かりやすい文章でまとめましょう

  • ビジョンを決める

ビジョンは「目指すべき理想の姿」です。定めたミッションから逆算し、ミッションを果たしたその先の姿を想像しましょう。ビジョンは環境に合わせて変化させるため、その都度策定し直しましょう。

  • バリューを決める

バリューは「自社の行動指針」です。ミッションとビジョンを実現させるためには何を行うべきか、どんな行動をとるべきかを考え、策定します。バリューもビジョンと同様、変化するもののため、定期的に見直しましょう。

策定に大切なことは否定しないことです。

それぞれの立場の代表が集まり、設定するため、意見がぶつかる可能性があります。しかし、それぞれの信念があり、発言しています。様々な立場の意見を聞き、まとめることは困難ではありますが、会社の羅針盤であるMVVの策定に前向きに取り組むようにしましょう。

また、言葉の定義を明確にし、共有することも極めて重要です。

曖昧な表現では認識にズレが生じ、ぼんやりとしたものが出来上がってしまいます。それでは策定した意味がありません。誰もが同じ認識で行動できるよう、言葉の定義を明確にすること、それを共有し共通認識でいられるよう心がけましょう。

浸透方法

MVVは、従業員に浸透し、実施することが重要です。ただ策定しただけでは従業員の共通認識にはなりかねます。従業員に浸透させる方法を紹介します。

  • 社内報の作成
  • 社員をMVVに沿って評価、表彰する
  • 経営者からの発信
  • 策定メンバーが実施、部下に行動で伝える

浸透させるにあたり、重要なのは押し付けないことです。皆さんも日常生活で押し付けられることでやる気が無くなったり、不快感を覚えたりすることはありませんか。それは働くにおいても同じです。一方的にMVVを押し付けられても浸透したとは言えません。そのため、企業と従業員との信頼関係が築いているかどうかが鍵になってきます。何をするにおいても従業員との信頼関係は最重要事項になってくるため、普段から信頼関係を築くようにしましょう。

MVVの事例

最後に、実際の企業がどのようなMVVを掲げているのかをご紹介します。

三井物産株式会社

Mission

”世界中の未来をつくる”

大切な地球と人びとの、豊かで夢あふれる明日を実現します。

Vision

360° business innovators

一人ひとりの「挑戦と創造」で事業を生み育て、社会課題を解決し、成長を続ける企業グループ。

Value

”「挑戦と創造」を支える価値観”

「変革を行動で」「多様性を力に」「個から成長を」「真摯に誠実に」

参照:会社情報 | 経営理念 - 三井物産株式会社 (mitsui.com)

日立グループ

Mission

優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する

Vision

日立は、社会が直面する課題にイノベーションで応えます。優れたチームワークとグローバル市場での豊富な経験によって、活気あふれる世界をめざします。

Value

和・誠・開拓者精神

参照:日立グループ・アイデンティティとは:日立 (hitachi.co.jp)

株式会社マネーフォワード

Mission

お金を前へ。人生をもっと前へ。

Vision

すべての人の、「お金のプラットホーム」になる。

Value

「User Focus」「Technology Driven」「Fairness」

参照:ミッション|株式会社マネーフォワード (moneyforward.com)

まとめ

①MVVは、「ミッション 目的」「ビジョン 理想の姿」「バリュー 行動指針」の略

②MVVは企業経営の羅針盤

③浸透させるには、企業と従業員の信頼関係が必要

MVVは社外への影響力もあるため、「第三者から見てどう思うか」という視点も大切です。

企業の羅針盤でありながら、企業を映し出す鏡でもあるため、誰が見ても分かりやすい、その企業の象徴となるMVVの策定を心がけましょう。

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