知的財産権と知財戦略

皆さん、「知的財産権」という法律をご存じですか?

近年、ブランドデザインの模倣や商標権侵害等で大きな話題を産むことが多くなりました。「特許」や「商標」などを聞いてもピンと来なかったり、法律という点で難しく考えてしまったりしますが、知的財産権を理解しておかないと自社が被害に遭ったり、気づかない間に加害していたりする可能性があります。

今回のコラムでは、そんな「知的財産権」についてご紹介します。

自社製品を守るためにも、戦略のひとつとしてもぜひ参考にしてみてください。

知的財産権とは

”知的財産権(知的所有権)”とは簡単に言うと、自分のアイデアを他人に盗まれないように守る権利のことで、「知財(ちざい)」と略されることも多いです。

せっかく自分が頑張って開発した仕組みやアイデアを他人が真似して使っていれば怒ってしまいますよね。しかし、特に無形のものは誰が考えたのかが分かりにくく、自分のモノだと主張することが難しくなってしまいます。知的財産権があることで、自分のアイデアを他人に勝手に使われることはなく、仮に使われてしまったとしても本来は自分のモノであると主張することが出来るようになります。法律で自分のアイデアを守ることが出来るということです。

知的財産権には様々な種類があり、種類によっては申請が必要であったり、保護される期間が変わってきたりします。どんな種類の権利があるのかをご紹介します。

著作権と産業財産権

知的財産権には大きく分けて2種類の権利が存在します。

  • 著作権
  • 産業財産権

著作権は、自分がオリジナルで創作したモノを守る権利のことです。著作物の利用は著作者(著作物を創作した人)に認められ、著作物が創作された時点で著作権が発生するため、特別な申請等は必要ありません。世の中に出回っているモノは全て著作権があると思っていいでしょう。

例えばSNS上で話題になった画像をを投稿者に無断でダウンロードし、自分が再びアップロードすることは著作権の侵害に当たります。SNS上の画像であっても撮影者が著作者であるため、無断で使用することはできません。しかし、「フリー画像」と呼ばれるものは使用しても問題ありません。商用でフリー画像を利用する場合は「商用利用可能」であるかを確認してから活用するようにしましょう。

著作権の保護期間は著作者の死後70年。文化庁の管轄です。

産業財産権は、「特許権」「実用新案権」「意匠権」「商標権」の4つに分けられます。

  • 特許権ー自然法則を利用した新しい発明の保護の権利 (保護期間20年)
  • 実用新案権ー物品の形状、構造、組み合わせに関しての考案の保護の権利(保護期間10年)
  • 意匠権ー工芸品、工業品のデザインの保護の権利(保護期間20年)
  • 商標権ー商品名やロゴマーク等の保護の権利(保護期間10年 延長可)

産業財産権は自ら出願する必要があります。著作権と違い申請をしていなければ権利を主張することが出来ないため注意しましょう、管轄は特許庁です。

知的財産権の目的は以下の通りです。

著作権・・・文化を発達させること

産業財産権・・・産業を発達させること

著作権は、より多くの人にたくさん創作し、文化を発達させてほしいという目的で権利が与えられます。せっかく創作しても真似されてしまっては創作意欲を失ってしまいます。そうならないためにも、著作権を与え、創作物を守られるシステムが構築されました。

産業財産権は主に商用で利用されるような権利を多く与えています。自社が開発、製作したモノが他社で利用されてしまっては開発意欲も失われ、利益も減少することで市場の縮小などの恐れもあります。そのため、産業の発展のためにも開発したものは申請をすれば法律で守られるようになっています。

産業財産権の申請の流れ

産業財産権を取得するためには特許庁に申請を出し、認められる必要があります。どのような流れで審査をするのでしょうか。

一般的には審査書類を提出した後、審査結果が通知され、拒絶される場合は拒絶理由通知という通知があります。その後、登録料を支払って権利を得ることが出来ます。

申請書類を提出してから審査が行われ、登録されるまでに半年以上かかることもあります。知的財産権の世界では早い者勝ちのため、同じ技術を先に開発していたとしても他社が先に登録してしまえばその技術は他社のモノになってしまうため、注意してください。急ぐ場合は早期審査を利用しましょう。

ビジネスと知的財産権

知的財産の中でも、特にビジネスに深くかかわってくるのが産業財産権です。産業財産権は法律で一定の「独占権」を与えれれているため、特許などを取得すれば他社は真似できず、万が一真似されていたとしても損害賠償請求などを行うことが出来ます。

では、なんでも産業財産権を取得すれば良いのでしょうか。実は産業財産権を得ることにより、デメリットも生じます。これを「知財戦略」と呼ばれ、知的財産権を使ってビジネス戦略を練ることも重要なマーケティングです。どんなデメリットがあるのでしょうか。

知財戦略を練ろう!

特許権や実用新案権は、取得することで技術の内容までもが公開されてしまうことがデメリットとして挙げられます。全く同じ技術は使用できませんが、少しでも違えば新しい技術として使用できてしまったり、保護期間が切れてしまえば独占権がなくなるため、誰もが使用できてしまったりしてしまいます。そのため、独自性の高い技術や自社の中心となる技術はあえて申請しないという戦略を練ることもできます。

特許権(発明)は20年で権利が切れてしまいますが、商標権(名前)は10年ごとに更新できるため、永続的に使用することが出来ます。そのため、特許は切れてしまっても商標権を登録しておくことでブランド名という知的財産権を残すことが出来ます。

特許権の有効利用の方法として「開放特許」というものがあります。開放特許は、権利の譲渡やライセンスの付与を行うことが出来、これを使ってビジネスを行うことが出来ます。例えば大手企業の開放特許を使用することで自社の開発費用や時間短縮を軽減させることが出来ます。逆に自社の使用していない特許を開放特許にして他社が使うことでライセンス料や譲渡費用などの収入を得ることが出来ます。

”QRコード”の話

皆さん「QRコード」を日常的に使用していませんか?近年はキャッシュレス化が進み「QRコード決済」と呼ばれるものも増えてきました。では、そんな身近な存在であるQRコードは誰が開発したのでしょうか。

実はQRコードは愛知県の株式会社デンソーウェーブという自動車の会社が開発した技術です。1994年に開発されたQRコードは、その革新的な技術で30年経った今もなお時代の最先端で活用されています。これほど多くの場面で活用されているQRコードは、特許を公開し誰でも無料で使うことが出来るようになっています。これにより今では世界中で使われているインフラを作ったのです。ビジネスの世界ですが、こうした公開されている技術があるからこそ産業が大きく発展し、今の私たちの生活があるのでしょう。

技術は誰でも使用できますが、商標登録は行われているため「QRコード」という名前を使用する際は「QRコードは株式会社デンソーウェーブが商標権を保有しています。」という文言を入れるようにしましょう。

参考:「QRコード」(株)デンソーウェーブ | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

知的財産権 メリット・デメリットまとめ

著作権 メリット

著作権は様々な権利を総称して「著作権」と呼びます。どんな権利とメリットがあるのでしょうか。

  • 著作物を公表で、公表の方法を決めることが出来るー公表権
  • 著作物の名前や内容を他人が勝手に変えられないー同一性保持権利
  • 印刷や写真、複写、コピー、録音など物に複製することが出来るー複製権
  • 著作物や複製物(映画以外)を販売・提供することが出来るー譲渡権
  • 著作物の複製物(映画以外)を他人に貸し出すことが出来るー貸与権  …etc

著作権にはこれらの権利が認められており、他人が勝手に使用したり販売したりすることが出来ません。自然的に発生するため、デメリットもなく、創作物が守られる仕組みになっています。

産業財産権 メリット・デメリット

  • 自社の技術やデザイン、名前を勝手に使われない
  • 取引で信頼を得られる
  • 他社からライセンス料などのビジネスに繋がる
  • ブランド名を永続的に残すことが出来る

  • 技術内容が公表されてしまう
  • 独占権を得られる期間が決まっている(商標権以外)
  • 権利を得るために時間と費用がかかる

産業財産権のメリットとデメリットは以上の通りです。権利を得ることで信頼やビジネスに繋がりますが、逆に公になってしまうことでデメリットも生じてしまいます。両方を理解したうえで戦略を考えてみましょう。

最後に

知的財産権は創作者を守る法律です。私的な創作物でも、商的な創作物でも創作者には守られるべき権利があります。知らないうちに被害者にも加害者にもならないよう、知識をつけておきましょう。

また、知的財産権はビジネスにも深く関わってきます。上手く活用することが出来れば収益を得ることが出来るビジネスチャンスにも繋がりますが、デメリットを理解していなければ事業全体の命運に関わってきます。知的財産権とはなにか、今一度確認してみてはいかがでしょうか。

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