未来は自分で切り拓く!~エフェクチュエーションってどんな考え方?~

皆さんは、「エフェクチュエーション」という言葉を耳にしたことはありますか?

聞きなれない言葉かもしれませんが、今世界中で注目されている意思決定プロセスです。

経営をする方、新しく事業を行う方には、ぜひ知ってほしい思考様式のため、ぜひ参考にしてみてください!

エフェクチュエーションとは

エフェクチュエーションとは、成功した起業家達に共通する考え方や行動パターンを体系化した意思決定理論のことです。

2008年にアメリカのバージニア大学で教授を務めるサラス・サラスバシー氏が発見・提唱しました。

サラスバシー氏は、成功している起業家がどんな意思決定をしているのかに着目すると、共通した意思決定のプロセスがあることが判明しました。

エフェクチュエーションの大きな特徴は、「予測」ではなく、「コントロール」によって不確実性に対処する点です。

従来の経営学では、情報収集や分析から未来を予測することが合理的な考え方だとされてきました。しかし、成功している起業家達は起きた出来事について”今の自分に何ができるか”という視点で物事を考えていることが分かりました。ある程度予測して行動することも必要ですが、”今の自分に何ができるか”と未来を「コントロール」するのがエフェクチュエーションの思考様式です。

従来の思考様式“コーゼーション”

エフェクチュエーションに対して、「コ―ゼーション」と呼ばれる思考様式も存在します。

コ―ゼーションとは、エフェクチュエーションが誕生する前の従来の意思決定理論で、特徴としては「目的主導」で最適な手段を追求する思考様式です。

目標から逆算して未来を予測し、その目標を達成するためには何をするべきか、必要な手段を検討します。

目的を狙って弓矢を放つように、顧客ニーズや競合、市場の分析を行い、計画を正確に達成することを追求します。具体的な目的を設定することで効率的で合理的にビジネスを進めることが出来るため、ある程度市場が拡大し先行きが予測できる場合や、企業に十分な経営資源がある場合には非常に有効な思考様式です。

しかし、全く新しい製品やサービスを展開する場合は、事業の先行きを予測することは困難です。また、外的要因などで目的の大幅な修正が強いられる場合も考えられ、潤沢な資源を保有していない場合、市場展開は厳しい状況に陥ってしまう可能性があります。

エフェクチュエーションの思考様式では、不確実性や困難を予測するのではなく、コントロールすることで現状を打開するという意思決定を行います。

特にコロナ禍やAIの浸透により、これまでの経営方式では事業の推進が困難になった事業者も多く、このエフェクチュエーションの思考様式が注目されるようになりました。

5つの行動原則

「目的主導」から「手段主導」で”何ができるか”に着目すると、革新的なアイデアが生まれたり、これまで気づかなかった経営資源の活用に結びつけることが出来たりするかもしれません。

エフェクチュエーションは、具体的に以下の5つの行動原則から構成されています。

  • 「手中の鳥」の原則
  • 「許容可能な損失」の原則
  • 「クレイジーキルト」の原則
  • 「レモネード」の原則
  • 「飛行機のパイロット」の原則

「手中の鳥」の原則

既に手元にある資源、能力、知識、人脈を明確化し、それらを使って何ができるかを考えます。

目的を達成するために新しいアイデアや新しい資源を探すのではなく、今手元にある手段から何ができるかを考え、チャンスを切り拓きます。

既存の手段として、以下の3つの資源から考えてみましょう。

  • 自分は誰か

自分自身の属性や能力、個性、価値観などをことを指します。

自分はどんな人で、どんな強みを持っているのかという自己分析をし、それを資源として活用する方法を検討します。

  • 自分は何を知っているか

自分の知識のことを指します。

人が歩んできた道のりによって、それぞれ学んできた知識や経験、スキルが異なります。

これまでの人生を振り返り、自分が培ってきた知識や経験、専門性を活用できる方法を検討します。

  • 自分は誰を知っているか

自分が持っている人脈のことを指します。

家族、友人など、持っているネットワークを洗い出します。

頼れる人やアプローチできる人を探し、人脈を使って目的達成を検討します。

「許容可能な損失」の原則

”いくらまでなら損失してもいいか”という失敗をしても許容できる損失をあらかじめ決めておくことです。

従来の思考様式であるコ―ゼーションでは、どのくらいのリターンがあるかを想定して投資をする考え方でした。

一般的に、リターンが大きいものはリスクも大きく伴います。そのため、リスクを最小限に抑えるために超えてはいけない損失のラインを決めておくと、失敗しても学びながら次へと進むことが出来ます。

クレイジーキルトの原則

「クレイジーキルト」とは、形や色などの違う布をパズルのように組み合わせて作り上げる一枚の布のことです。

エフェクチュエーションの場合、ステークホルダー(従業員・株主・顧客・政府など)や競合企業をパートナーと捉え、パートナー達と良好な関係性を築きます。

多様な感性や技術、資源を持つパートナー達と共同作業を行うことでパートナーが持つ手段も自身の手持ちの手段となり、新しい価値を生み出すことに繋がります。

レモネードの原則

アメリカのことわざ、「(質の悪い)レモンを手に入れたなら、レモネードを作れ」(when the life gives you lemons, make lemonade)から由来しており、日本のことわざでは”災い転じて福と為す”を指します。

つまり、逆境や不運な事態に陥った際、避けたり、無理に合わせたりするのではなく、機会として新たな価値を想像していくことを意味します。

不運な出来事もポジティブに捉え、新たな行動の源泉とします。

事例:ローソン「シンプルショートケーキ」

食品の原料高騰に反して、消費者のコンビニクリスマスケーキへの期待度は高まっている。

その逆境から、トッピングのない「シンプルショートケーキ」を販売した。後から自分で自由にデコレーションをできるよう真っ白なショートケーキにし、価格を抑えることに成功した。

家族や友人などと一緒に自由にトッピングすることが出来るため消費者の”体験”も付随して提供することができ、新たな価値を想像した。

「飛行機のパイロット」の原則

飛行機のパイロットは、自分の位置を把握し、自らコントロールして進んで行きます。

パイロットのように、未来は自ら作るものと考え、自分ができることに集中します。未来を予測してチャンスを待つのではなく、自身が未来を創る、コントロールできることに集中して行動することを指します。

実践してみよう!

エフェクチュエーションを身に着けるためポイントを3つご紹介いたします。

自身が持っている手段を把握し、拡大する

エフェクチュエーションの根底には、”自分は誰か、何を知っているか、誰を知っているか”の「手中の鳥」の原則があります。

自身や自分が所属する組織が持っている手持ちの手段を改めて見直し、把握してみましょう。

手持ちの手段を把握した後は、持っている手段を拡大してみます。

ステークホルダーと共有しながら、手持ちの手段と拡大先を把握し合いましょう。

行動してみる

まずは小さく行動し、その結果として得られた反応を参考にしながら次の行動を起こします。

エフェクチュエーションでは、事業機会は自身の行動によって創造されるものだと考えます。事業機会を待つのではなく、実践しながら、自ら機会を切り開いていきましょう。

スマートフォンなども、消費者のニーズを満たすだけでなく、人々の生活様式を創造し、今では生活に欠かせない存在となっています。

受動的に起きた出来事、これから起きるであろう出来事に合わせるのではなく、自ら行動し未来を創っていきましょう。

そのためにも、小さなことからまずは実践してみることが重要になってきます。

他者を巻き込む

「誰を知っているか」を活用し、自身の行動に他者を巻き込んでみましょう。

協力者を得るためには、”アスキング”と呼ばれる「協力者を得るための交渉力」を磨く必要があります。実践を繰り返し、アスキングを上達させることで協力者を増やし、自身の手持ちの手段も増やすことが出来ます。

協力者やステークホルダー達と情報を共有することも忘れずに行いましょう。

自身の目的、目標、アイデンティティなどを共有しておき事で、事業の方向性にブレが生じることなく目指すべき方向に進むことが出来ます。

「誰を知っているか」を活用し、行動領域を広げることで創造する未来がより現実的になっていきます。

まとめ

今回のコラムでは、「エフェクチュエーション」という思考様式についてご紹介しました。

コ―ゼーションは目的へ向かって直線的な道のりに対し、エフェクチュエーションは手段に着目し、新たな目的や道を切り開く考え方です。

短期間で環境が大きく変化する昨今では、未来を予測できないものとして自ら未来を作り出す方法に注目が集まっています。

しかし、どちらの意思決定方法が優れているというわけではなく、状況に応じた意思決定をすることが何よりも大切です。

環境や目的に合わせて、適切な意思決定を行うよう心がけましょう。

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