エレベータートークをマスターしよう!!~1分で心を掴む会話術~

ドラマや映画などのビジネスシーンにおいて、主人公が取引をしたい相手とエレベーターに乗り合わせて短時間でプレゼンをするシーンの見覚えはないでしょうか。このシーンを「エレベータートーク」と言います。
実際の現場においてエレベータートークをエレベーターの中で行われることはなく、特に日本では誰が聞いているか分からないエレベーターの中で情報漏洩の観点から、ビジネスの話をすることは禁物ともされています。
しかし、このエレベータートークはエレベーターの外でも活用することができます。
今回のコラムでは現代の日本で言われる「エレベータートーク」、短時間で話をまとめ、プレゼンするポイントなどを紹介します。
ビジネス以外でも、話したいことをまとめて話す能力は重宝されるため、ぜひ参考にしてみてください。
エレベータートークとは
エレベータートークとは、短時間で分かりやすく伝える会話術のことで、「エレベータートーク」または「エレベーターピッチ」と呼ばれます。エレベーターの最上階まで行ったとしても、数秒から1分程度。この短時間で印象づける会話をするためには、テクニックが重要になります。
そもそもエレベータートークとは、欧米のビジネス文化でした。アメリカ・シリコンバレーで起業家が資金調達の為に偶然を装って投資家とエレベーターに乗り合わせる。エレベーターが目的地に着くまでの時間に自らのビジネスについてプレゼンをし、資金調達に成功したことから由来されています。実際にエレベーターの中でビジネスの会話をすると非常識である印象を与えてしまいますが、会話をする時間がない相手に短時間で印象づける、相手の時間を奪ってしまわないように要点をまとめる会話術などとして重要視されています。
メリット・目的
エレベータートークのメリットは、人間の短期記憶に働きかけやすいことです。人間の短期記憶とは、数十秒から数分保持される記憶のことです。そのため、長時間会話をしてしまうと何が言いたいか伝わらなかったり相手が会話の内容を忘れてしまったりするのは、この記憶が関係してきます。
エレベータートークの数十秒では短期記憶に働きかけやすく、相手の興味を惹きつけることができます。
その他に、どのシーンでも活用することが出来るという点もメリットとして挙げられます。
会議やプレゼンの導入、忙しい上司へのアプローチや営業でのアイスブレイクなど、エレベータートークの力をつけておくことで活用の仕方は多岐に渡ります。数秒で相手の興味を引き寄せられる話し方はどの現場でも活躍することでしょう。
また、この会話の目的は興味を持ってもらうことです。その場で解決、結果を求めるものではありません。次の機会を得ることを重要視しましょう。限られた時間で伝え、「その話を後で詳しく聞きたいな」と思わせ、後日ゆっくり話をする機会を設けましょう。
エレベータートークは相手の興味を惹きつけ、次に繋げることを目的としています。
エレベータートークをマスターしよう!

では、さっそくどのようにして話を構成していくのかをご紹介します。
原則は、”結論ファースト”です。プレゼンの場などであえて結論を最後にすることで印象付ける方法もありますが、この短い会話の中ではまず最初に結論を伝えることを心がけましょう。
相手の短期記憶に残るためにも、「結局なにが言いたいの?」と思わせてしまっては意味がありません。まずは何を伝えたいのか、一番伝えるべきことを始めに話すことを心がけましょう。結論ファーストの具体的な話し方は後の章で詳しく説明します。
構成要素
エレベータートークは以下の要素で成り立っています。
- 肩書・商品名
- ベネフィット
- 独自性
- 興味性
- 理由
- クロージング
1.肩書・商品名
まず最初は、自分が誰かを名乗り、何を扱っているのかを簡潔に述べましょう。
ここのポイントは、自分の肩書や商品の名前をアピールする必要はありません。あくまでも簡潔に何者であるかを紹介する挨拶の場です。また、主に所属している「団体名」「役職名」「氏名」などを述べるのが一般的ですが、ここで言う「役職名」は”代表取締役”や”○○部長”などのアピールよりも、「何を提供できる人間か」という点で話すと、興味を持ってもらいやすいです。
例
はじめまして。私、お客様のパートナーとして営業支援や商品の企画・開発などをサポートさせていただいています。FunnyConsultingの笠井ゆうみと申します。
2.ベネフィット
ベネフィットとは、その商品の利点によって顧客が受けられる恩恵のことを指します。
商品やサービスのメリットのみを話しても、顧客のニーズに合っていなかったり良さが伝わりにくかったりします。例えば、「この車は車内空間が広いです。」と伝えるのと、「この車は車内空間が広いため、大勢で出かけることが出来ます。」「車中泊が可能です。」など、相手のニーズに合わせてベネフィットを紹介することで顧客にとってどんなメリットがあるかが伝わりやすくなります。
例
弊社のプロジェクトパートナーサービスは、お客様の目標達成に向けて一緒に計画から進めて参ります。計画の段階からサポートするため、事業運営のプロの視点から的確なアドバイスにより最短距離でゴールを目指すことが可能です。
3.独自性
他社や、似たようなサービスを提供している競合との差別化を図るために、独自性をアピールします。
他社ではなく、自社を選ぶメリットや自社ならではのサービスなど、競合が多い業界程独自性をアピールしましょう。
しかし、このエレベータートークの中で全てを話すことは時間の関係からも得策ではありません。のちの「興味性」にも関わってきますが、気になるワードや簡単に説明するだけでも相手の印象に残るため、オリジナリティのある機能やサービスを簡潔に話すことを心掛けましょう。
4.興味性
相手の興味を引く言葉として、「業界初」や「○○率△△%以上」「日本で初めて導入した」などの相手が思わず気になってしまうようなフレーズを入れましょう。
どれだけベネフィットや独自性が優れていても、相手の興味を引き、記憶に残らなければ意味がありません。そのために、相手の気を引くようなフレーズを入れ込んでおきましょう。
5.理由
独自性や興味性に信憑性を持たせるために、実際の経歴や実績を理由として紹介しましょう。実際に何を手掛けたのか、どんな成果を上げたのかを伝えることで信頼感を得ることができます。
ただ相手の興味を引く言葉だけでは逆に不信感を与えてしまう可能性もあるため、どんな理由をもって相手に勧めているのかを説明しましょう。
6.クロージング
最後の締めの言葉としてクロージングをします。
クロージングの際は、次に繋がる機会の提案を行います。どこに連絡をすればよいのか、いつまでに連絡が欲しいのかを伝えることで相手も行動しやすくなります。この先は相手に任せる形でさりげなく締めるようにしましょう。
例:FunnyConsulting
では、ここで弊社「ファニーコンサルティング」を例に簡単にエレベータートークを作成してみます。
はじめまして。私、お客様のパートナーとして営業支援や商品の企画・開発などをサポートさせていただいています。FunnyConsultingの笠井ゆうみと申します。(肩書・商品名)
弊社のプロジェクトパートナーサービスは、お客様のゴールに向けて最善策を提示します。お客様の目標に対して計画から一緒にサポートするため、事業運営・企画開発のプロの視点から最短距離でゴールを目指すことが可能です。(ベネフィット)
弊社では、製造業向けのコンサルティング会社では珍しい「パートナー型コンサルティング」の形を導入しており、お客様のパートナーとして一緒に業績拡大を目指します。(独自性・興味性)
一度利用していただくことで、御社の業績拡大はもちろん、仕事を楽しく、面白くするお手伝いもさせていただきます。ぜひ、〇日までにこちらにご連絡ください。(クロージンング)
結論ファースト「PREP法」
エレベータートークの中でも、特にベネフィットを提示する際にぜひ活用してほしいのが、「PREP法」です。
PREP法は以下の4つの要素の頭文字から成り立っています。
- P:Point(結論)
- R:Reason(理由)
- E:Example(具体例)
- P:Point(結論)
それぞれの要素を解説していきます。
P:Point(結論)
前述した「結論ファースト」として結論や要点を始めに話します。
まず伝えたいことを始めに話すことで、相手はその後の会話の内容が頭に入りやすく、大きな負担をかけることなく会話が進みます。要点が曖昧だと内容を確認するために不要なやり取りが増え、相手にストレスを与えてしまうことがあります。短い時間で相手に伝える際は結論や要点を最初に話し、効率的に会話を進めましょう。
R:Reason(理由)
要点に根拠を伝える要素です。
なぜその結論に至ったのか、要点や結論に信憑性を持たせるための理由を述べます。
E:Example(具体例)
要点や理由をさらに信憑性を高めるために、具体例をいくつか提示します。
重要な点は、要点や理由にきちんと関連された具体例であることです。つながりのある例を提示しなければ、話全体の説得力が失われてしまいます。そのため、関連付けた具体例を用意しておきましょう。
また、例をいくつか提示する際は違う角度からの例を用意しておきましょう。似たような例ばかり並べるのではなく、違った視点からの例を提示することでより相手からの興味を惹きやすくなります。
P:Point(結論)
最後にもう一度結論で締めましょう。
最初のPointを繰り返すようにして主張することでより協調されます。端的に話し、会話をまとめましょう。

エレベータートークの作成手順
エレベータートークを作成する手順を紹介します。
- 要素を書く
いきなり文章を作成するのではなく、まずは、6つの要素(肩書~クロージング)を書き出し、要素に応じた事柄を整理しましょう。
必ず伝えたいことや、必要な情報などをとりあえず書き出していきましょう。
- 組み立てる
書いた要素を文章として組み立てていきます。必要な事柄を取捨選択し、PREPを意識しながらひとつの文章としてまとめます。
エレベータートークは大抵1分程度ですが、ここでの文章は3分程でも構いません。まずは文章にしてみましょう。
- ブラッシュアップ
ここで3分で作った文章を1分程度にまとめましょう。
ブラッシュアップする際は声に出してみるのが効果的です。文字として眺めるだけでなく、実際に自分が喋ってみて話に違和感がないかチェックしましょう。誰かに聞いてもらうこともお勧めです。
また、実践とブラッシュアップを重ね、内容を磨いていくことも重要です。話すスピードや身振り手振り、相手の反応などもみて、自分のエレベータートークを作り上げていきましょう。
まとめ
いかがでしたか?
今回のコラムでは、「エレベータートーク」として短時間でプレゼンを行う方法をご紹介しました。
どれだけ製品やサービスの質が良くても、数秒から1分程度の短い時間で相手の興味を惹くには、それなりの話術が必要です。また、話す内容だけでなく声のトーンや間、スピード、身振りなども相手の印象に残るための必要な要素です。トークの内容にこだわることも重要ですが、それ以外の要素も詰めることでより相手の興味を惹きつけられるエレベータートークが出来上がります。
また、実際にエレベータートークを行う予定がなくても、”短時間で相手に伝える”という技術は重要な技術です。どんなシーンでも活用することができるため、是非参考にしてみてください。